rep|「TAKASHI SUZUKI / BAU」afternote

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第4回目を数える「rep- radlab exhibition project」は今回、京都北山に位置するギャラリー「SuperWindowProject」との共同によってアーティスト鈴木崇による作品「BAU」を紹介した。本作は、そのタイトルが示唆する通り、あたかも建築物に見えるスポンジの群を映したものであるのだが、その魅力はスポンジ群をある一定の角度から撮影するとあたかも建築物のように見える、というところにあるのではない。ここには建築への意思はない。しかしこの作品には建築をめぐる思考がある。


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会場に入ると、膨大な小さい写真の群。片やドイツ写真史にその「シューレ(派)」とともに名を残すベッヒャー夫妻の「タイポロジー」を思わせる整然とした壁面があり、片やDMにも掲載されたひとつの図像が孤立するように配置された壁面がある。一方の面には類似した構成をとる三つの図像が縦に並び、他方の面には横一列に図像が一本のラインを描いている。立ち位置を、視線を、変えるたびに観者は、その度ごとの風景を得る。図像が建築物に見える瞬間、はこうした変化のただ中にある。その瞬間が図像の群から個別の写真へと観者を導いているようだ。


本作において鈴木崇は、誰にでも入手可能なスポンジという素材を「直感的」に並べ、できあがったかたちをそのままに撮影している。既にある建築物も、いかなる建築写真も参照することなく、鈴木は、彼の記憶の中に浮かぶおぼろげな「建築的な構成」を契機としてかたちに決定を下す。その決定には、今まで彼が見てきた建築物やそのイメージが類推を待つようにして控えている。実物であるか表象であるかは関係なく、建築を知覚するという環境から生み出されたこの曖昧なかたちが、スポンジの積層併置というきわめて具体的な操作によって個別に実現しているという点がまず興味深い。


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しかし、これを建築模型写真と同じではないか、と思う向きもあるかもしれない。確かに写されたモノがあまりにあっけらかんとそこにあるがために「そのように」見ることもできるだろう。しかしこの二つには明確な違いがある。建築模型は未来への投影に基づいており、一方で鈴木の「BAU」は、上に述べたように、いわば過去からのフィードバックに基づいている、という違いだ。「建築への意思がない」と先に述べたのはこの違いによっている。


そして「建築をめぐる思考」という言い方によってこういうことが言えるだろうか。建築は(当然のことではあるが)対象化される。着想を図面にすること、それを模型にすること、あるいは建築を写真に写すこともそのひとつだ。本作「BAU」は、その対象化を試みたものではなく、むしろ対象化された建築について語ろうとするのであり、とりわけそれがいかに記憶されるかについて語ろうとしているように思われるのだ。


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僕のテーマは、「見る行為とはどういうことなのか」を探究することなので、いつ何を写し、どう記録したのかということには、あまり重要性をおいていません。(…中略…)僕は、写されたものが、どのように見る人の精神や意識の中で変化して、保存されていくかということのほうに興味があるんです。


このように語る鈴木にとって、「写真となった被写体」がどのように知覚されるのかこそが重要である。その延長上にある本作が問うているのは、なぜこれらスポンジの群が時に建築物のように見えるのか? ということであり、同時に「建築の写真としても見られうる、モノとなった写真」がどのような知覚を引き起こすのか? ということでもあるだろう。この作品の主眼は、あらかじめそれが「そのようなもの」であるという先入観をその度ごとに問いなおし、知覚の安定に揺さぶりをかけることに置かれているように思われる。


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群としてあるときにはカラフルな様相を帯び、寄れば建物として見え、個別の写真をつぶさに眺めてみれば、建物に見える/見えないということよりも縮小されたスポンジのテクスチャーと用いた印画紙の荒めのテクスチャーとが時に重なりあうことに気が取られる。彼はかたちに関する決定と同時に、これら写真となった被写体の、そしてモノになった写真の知覚のされ方に関 するきわめて慎重な決定をなしている。


鈴木崇「BAU」という作品を特徴的な「建築写真」として消費することは容易だ。例えば個別の図像がどの建築に見えるか、という表層的なゲームを楽しむことはできるだろう。しかし、おそらくその見方は日々私たちが建築物を写真という形で眺めながら、それだけで「何かを理解したと思いこむ」ことと根を同じくするのではないか。建築物を知覚することが写真によって代行されるという状況があまりにも当たり前のことになっている現在、建築という表象のあり片を緻密な操作によってシンプルに問いなおそうとする、鈴木のこの試みが果たす意義は深い。


( RAD / S )

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